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08/9/11 後日談:「オデットさまへの手紙」(マリーより)掲載

オデット様へ

お元気ですか。
オデット様がウィンデンス本領に行かれてから、1ヶ月ですね。
フランジルは、今日も変わらず明るく暖かで、平和です。
あんな事件があったのが、不思議に思えるほど。

領主様もここ数ヶ月の衰弱が嘘のようにすっかり元気で、また狩りに行くようになりました。
剣を持って、若者達に自ら稽古をつけたりもしています。
「婚儀が終わって、肩の荷がひとつ下りた」なんて笑っていらっしゃいます。
やはり、領主様あってのフランジル。
お屋敷だけでなく、領全体が活気づいているように思います。
事件が起こり、ご自身も体調を崩されて、と領主様の今までの心労は只ならぬものだったでしょう。
そして、オデット様がお側から離れたことも。
それらを、みなに気づかれぬように、心配をかけないように振舞われている領主様には、頭の下がる思いです。

以前と変わったことと言えば、執政官だったロットバルト様と補佐役のグリム・グラハム、そしてオディール様がいなくなったこと。
領主様の命で、今もオディール様とグリム・グラハムの捜索がされているのですが、行方はわかりません。
オディール様は今頃どうなさっているでしょうか。
昔からオディール様は、思慮深く慎みのある方でした。
思いやりがあり、時にご自身のことよりも周りの方々を優先するところが心配でもありました。
今回のことも、責任を感じて、フランジルを出たに違いありません。
元気な姿で戻ってくださることを、そして幸せになってくださることを願ってやみません。
本領の方でオディール様の行方の手掛かりがありましたら、教えてくださいませ。
こちらでも何かわかりましたら、ご連絡します。


さて
皆の近況をお知らせしますね。

ソフィアは、オデット様オディール様がいなくなったので勉強を教えることがなくなり、しばらくはとても寂しそうでした。
けれど今は、『ウィンデンス建国に関わる「古の戦い」について、とても興味深いことを発見したんです!』と毎日書庫で調べ物をしています。
なんでも、「古の戦い」の記述のなかにある「悪魔」の使う魔法が、ロットバルトが使った魔法に似ている、とのこと。
「ロットバルトはその悪魔の魔力に何かしらの影響を受けたのでは」など仮説を立てているようです。
さらに、「この仮説が正しければ、古代の歴史の新事実がわかるかもしれないし、白鳥に変える魔法については新しい発見です!」、と・・・なんだかとても生き生きとしています。
他の侍女たちは、「あの恐ろしい経験をあまり思い出したくない」というくらいなのに、ソフィアの探究心の強さには本当感心してしまいます。

ナターシャは、オデット様の婚礼後、諸国の方々が見えられることが増えたので、それらの対応を任せられています。
本当なら男の方がするものなのかもしれませんが、ロットバルト様やグリム、グラハムがいなくなって、どうしても人手が足りず・・・。
けれど、明るく話上手なこともあって、お客様にも喜ばれています。
話題が豊富なだけでなく、機転を利かせてその場の雰囲気を和ませたり、相手の気持ちを読み取ることができるのは、なかなかできることではありませんよね。
ただ逆に、諸外国の方々から聞いたお話を、面白おかしくお屋敷の者に話して聞かせたりしているのが、相変わらず困ったところ。
ちょっとしたことがお客様のご迷惑になることもあるのだから、と昨日も話したところです。

フランシスは、お屋敷にご両親がいらして、両親の強い要望により実家に帰ることになりました。
あんな事件があって、お屋敷でのお勤めをとても心配されてのことでした。
無理もないことです。
領主様も了解され一度は実家に帰ったのですが、1週間ほどですぐにフランシスはお屋敷に戻ってきました。
話をきいてみると、「まだ仕事をきちんとできていないのに、中途半端で辞めるのが嫌で」
あと、「もっとフランジルのお屋敷で働きたいんです」、と。
他の侍女たちは、普段大人しいフランシスが自分でこのような決断をしたときいて、びっくりしつつも喜んでいました。
私は、なんだか私が侍女になったときのことを思い出してしまいました。
オデット様は領主様から聞いているかもしれませんが、私も両親の反対を押し切って、お屋敷に仕えることを決めたのです。
今は、あのとき侍女になることにして、本当によかったと思っています。
ですから、フランシスのご両親に連絡をしたり、話をきいたり、とできる限りのことができればと思います。

オデット様が行かれてから、一番長く落ち込んでいたのはリーケです。
あのリーケがずっとしょんぼりしていたり、大好きなお菓子をつくっても、そのあとみんなに気付かれないように泣いていたり。
きっと、オデット様と一緒にお菓子を作っていたときのことを思い出したのでしょう。
ナターシャが気遣って、実家から可愛い布を取り寄せてきたり、リーケの好きそうな話をしたりしてくれています。
最近になってやっと、「庭師のペーターに、窓拭き上手くなったねって褒められたの!」などと、笑って話すようになりました。
でも、そう話している間は、やっぱり仕事の手が止まってしまっていて・・・まったく、リーケらしいです。
でも「リーケらしく」なって、何よりです。

オデット様、
私たちは元気です。
変わらずオデット様を思っています。
ウィンデンス本領でジークフリート様と幸せにすごしているかと思いますが、もし辛いことや悲しいことがあれば、いつでもフランジルに帰ってきてください。
辛いことや悲しいことなんてなくても、いつでも。
皆、オデット様と次に会うのを楽しみにしています。


それでは、また


マリーより 愛をこめて

あらすじ

大陸の北西端に位置するウィンデンス王国。
小規模だが海上交易の要衝にあり、自然豊かな国土がもたらす恵みに、繁栄を享受していた。
その昔、この地は「忌まれしもの」と呼ばれた悪魔に蹂躙されたことがあった。
人々は力を結集して立ち向かい、大きな戦いの末に悪魔を封じ、このウィンデンスが建国された。
しかし、悲劇は悪魔の復活によって訪れる。
王国のフランジルという一領に仕える執政官ロットバルトが、偶然にも悪魔の封印を解いてしまう。
男に憑り付いた悪魔は、フランジル領主を廃人に陥れ、その娘オデットを魔力で白鳥へと変えて追いやった。
王国への復讐に燃える悪魔は、ウィンデンスの王子ジークフリートに目を付けた。
ジークフリートは間もなく成人式を迎え、その晩餐会へ招かれた女性のなかから、花嫁を選ぶことになっていた。
そんな中、狩りに出かけた湖で、運命の女性と出会う。
月光に照らされる間だけは魔法が解けて人間の姿に戻っていたオデットであった。
ひとめで恋に落ちた王子は愛を誓い、それを証明するために晩餐会へ招待する。
しかし、悪魔の企みにより王子は一人の女性に魅了されてしまう。それはロットバルトの娘オディールであった。
果たして、ジークフリートとオデットの運命やいかに・・・。

ウィンデンス王国地図

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