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音楽、時間、演出

アメリカの音楽家ジョンケージ氏の作品には「4分22秒」という作品があります。
どのような作品かといえば、4分22秒の間、演奏者は楽器を前に「休符」を演奏しつづけます。
初演はピアノで演奏されたそうで、奏者は鍵盤を前に演奏?を披露したそうです。
どうやらオーケストラの演奏もあるようです。
前衛音楽の先駆けでもあり、「音楽として認められるか」などという議論もありますが、この楽曲で行われた「音楽」に対する重要な試みは、音楽家のみならず哲学者たちにも影響を与えました。

「音楽」とはどういった芸術かといえば、「ある定められた時間で、意図的に、主に聴覚に対して働きかける行為」と言って差し支えないでしょう。(「ある定められた」と書いたのは、作品の長さが有限であるからです。)
そういえば英語では「拍子」のことを、「time」といいますね。
音楽と時間が密接に関係あるという認識がもたれているという、よい例だと思います。
「意図的に」と書きましたが、ジョンケージ氏の作品は「意図的に無音という音を聞かせた」と解釈できるので、僕は彼が創作した作品を音楽と考えるのが妥当だという認識をしています。
彼は無音な会場の中に、偶発的に生まれた咳払いや衣擦れの音ですら、彼の創造した音楽の求めるところだとしています。
空間論や時間論などは高度な数式を用いられて論ぜらており、書き尽くすことの難しい学問ですが、本稿で、この話題については、「音楽と時間の経過の関わり方」についてのみ思うところを触れるにとどめさせていただきます。

その音楽が、どんな時間を経過するか?
これはCAでステージを演出・構成を考える際にも、よくよく考えていきます。
CAというパレットの絵の具はたくさんの種類の色があります。
それらを用いて、時間をどう彩っていくか。
どうしたら曲の時間の経過の仕方を効果的に見せることができるか。

テンポが速い曲でも、時間の流れがゆっくりな曲はありますし、テンポがゆっくりでも時間感覚としてはスピード感をつけたい曲もある。
例えば、速い曲に乗せて、ゆったりとしたダンスなどをさせたりすると、不思議と広がりが出る。
ユーロビートの曲に合わせて、日本舞踊などするシーンをつくったら、そういった効果も生まれるでしょう。
もちろん所作だけでなく、CAならばフラッグや衣装などの物理的なものも作品の流れる時間を彩ることができるでしょう。

時間を作る、ということでリズムセクションは大きな役割を担います。
演出としてCAのパーカッションはこんな感じであってほしいな、ということで「CAパーカッショナリティ」と題して指針を出したのですが、二年前に出して以来、現在でも、その考えは変わることなく、パーカッションセクションへの注文出すときの自分の原点ともなっています。
パーカッショニストにも二種類いると思います。
ひとつは「時間を支配するパーカッショニスト」。もうひとつは「時間を彩るパーカッショニスト」です。
話の流れの通りなのですが、CAでは後者の「時間を彩るパーカッショニスト」を目標にして稽古に取り組んでいくよう考えています。(「時間を支配する」というと、僕はマーチングのバッテリーセクションやドラマーを連想させますね。)
「時間を彩る」というのは、特には音色へのこだわりについての言及となります。
前回の公演で私が提案したのは「チャイナシンバルをハイハットトップで使用する」ということでした。
なぜこれが出たかというと、とある民謡ロックバンドのドラマーがその手法をやっていて、それが民族調・民謡調の音楽にも、なかなかしっくりいき、味のある作り方だなと思ったからです。もちろん、CAでやるにあたっては、そのドラマーの方が作り出す音とは、また違ってCAのサウンドに合うようにシンバルを選んでいます。

メンバーひとりひとりが作る色をどのように遣って時間を彩るかを試行錯誤するうちに、作品が出来上がっていきます。それがCA演出の楽しさであり醍醐味なのでしょう。

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